【名古屋市中村区】特定技能1号「建設」分野における外国人材の活用と申請手続き
昨今の日本では、「建設」業界では特に人手が不足している傾向にあると言われています。令和 10 年度に必要となる建設技能者数を推計すると 310 万人となるとも言われています。このような状況の中で、企業にとって人材確保は喫緊の課題です。この課題の対応策として、国は2019年4月に新たな在留資格「特定技能」を創設しました。この記事では、在留資格「特定技能」の中でもその建設分野にフォーカスして、諸々の申請手続きやポイントを、専門行政書士の立場から詳しく説明していきます。
2017年青山学院大学法学部を卒業後、服飾業界にて約6年間勤務
2023年度行政書士試験に合格し、2024年7月に開業
特定技能ビザの概要と重要性
近年作られた新たな在留資格「特定技能」(以降、特定技能ビザと呼称します)は、特定技能1号と特定技能2号に分けられています。
特定技能1号は、「本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって相当程度の知識又は経験を要する業務に従事」するための在留資格と定められています。つまり、以前までは認められていなかった専門的な知識や技能を必要としない業務に従事することができます。
対して特定技能2号は、「本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって熟練した技能を要する業務に従事」する在留資格と定義されています。こちらは1号とは異なり技能の熟練性が問われます。
今回の記事では特定技能1号をメインに解説していきます。
特定技能1号ビザの審査基準 「在留資格該当性と基準適合性」
どのビザにも基本的に、「在留資格該当性」と「基準適合性」という2種類の審査基準があります。「在留資格該当性」とは、申請人の行う活動の内容を定めた基準です。対して「基準適合性」は、申請人本人に関しての基準です。
ここでは、特定技能1号ビザにおける各々の基準を見ていきましょう。
在留資格該当性 (申請人の行う活動が以下のような活動であること)
入管法には以下のように定められています。
入管法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に掲げる活動
「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する業務に従事する活動」
※一部省略しております
「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」
特定技能1号で外国人を受け入れたい企業は、特定の諸条件(特定技能基準省令)を満たす機関である必要があります。具体的には、以下のような基準が挙げられます。
- 労働法、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 契約の締結以前1年間または締結後に同種の業務を行う労働者を離職させていないこと
※一部例外はあります - 契約の締結以前1年間または締結後に外国人の行方不明者を出していないこと
- 5年以内に出入国・労働法令違反がないこと
- 外国人の日常生活上の支援を外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること
また、建設分野の受け入れ企業は別の条件(上乗せ基準と言われています)も課されています。以下に一部ご紹介します。
- 技能習熟に応じて昇給を行うことを契約に明記していること
- 建設業法第3条の許可を受けていること
- 契約に係る重要事項について、当該外国人が十分に理解することができる言語で書面を交付して説明すること
- 建設キャリアアップシステムに登録すること
- 報酬額などを明記した「建設特定技能 受入計画」の認定を受けること。
「雇用に関する契約」
特定技能1号で外国人を受け入れたい企業は、「特定技能雇用契約」という特別な雇用契約を締結する必要があります。その契約は、例えば以下のような基準を満たす契約であることが求められています。
- 報酬額が日本人が従事する場合の報酬額と同じであること
- 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させること
- 報酬、福利厚生施設の利用などの待遇で差別的取り扱いをしていないこと
- フルタイム勤務であること
「特定産業分野」
特定技能ビザはあらかじめ決められた産業分野(14種類)で行う業務でない限り取得することはできません。建設業もその内のひとつです。
「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する」
特定技能1号ビザは「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」によれば、相当期間の実務経験等を要する技能をいい、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいうとされています。
「業務」
特定技能ビザは、産業分野だけでなく、その業務の内容まで定められています。外国人の行う予定の業務が規定されている業務内容に該当しない場合、このビザを取得することはできません。
建設分野の場合、業務内容は型枠施行、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、大工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ、表装、とび、建設大工、配管、建築板金、保温保冷、吹き付けウレタン断熱、海洋土木工と定められています。
基準適合性 (申請人が以下のいずれにも該当していること)
- 18歳以上であること
- 健康状態が良好であること
- 技能を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること
「建設」分野では、「建設分野特定技能1号評価試験」又は、「技能検定3級」の技能水準試験に合格することが求められています。
※技能実習二号を良好に終了した方はこの試験は免除されます - 日本語能力を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること
「国際交流基金日本語基礎テスト」でA2以上、又は、「日本語能力試験」でN4以上の成績を収める必要があります。
※この場合でも、技能実習二号を良好に終了した方はこの試験は免除されます - 特定技能1号での活動期間が通算で5年に達していないこと
1号で在留できる期間は通算5年です。引き続き在留する場合は特定技能2号などの他の在留資格に変更申請する必要があります。
特定技能「建設」申請の主な流れ
以上の点を踏まえて、特定技能「建設分野」の申請手続きは、以下のようなステップで行うのが望ましいでしょう。
1. 建設業法第3条の許可を取得
特定技能ビザで働く外国人を雇用するためには、まず建設業法第3条の許可を得る必要があります。この許可は、「建設特定技能受入計画」に記載する建設業許可番号としても使用されます。
2. 建設技能人材機構(JAC)への加入
次に、企業は建設技能人材機構(JAC)という機構への加入をしなければなりません。JACは特定技能外国人の労働の待遇を改善するために設立されたものです。加入方法には、正会員団体の会員になる方法と、直接JACの賛助会員になる方法があります。
3. 建設キャリアアップシステムへの登録
このシステムは、技能者の就業状況の確認や現場の効率化を図るためのものです。登録後に交付される事業所番号を「建設特定技能受入計画」に記載します。
4. 特定技能雇用契約の締結
建設業界では、特定技能外国人の安定的な雇用を確保するため、独自のルールが設けられています。主な特徴として、月給制の採用や技能習熟度に応じた昇給制度の導入が挙げられます。
5. 建設特定技能受入計画の認定申請
国土交通大臣に対して「建設特定技能受入計画」の認定申請を行います。この計画には、前述の各種許可や登録情報のほか、特定技能外国人への研修計画や適正就労監理機関による巡回指導の受入れなどが含まれます。
6. 1号特定技能外国人支援計画の作成
特定技能外国人が日本で安心して生活できるよう、様々な支援を行うための計画を作成します。住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習支援などが含まれます。
7. 在留資格申請手続き
最終的に、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行い特定技能ビザを取得します。
まとめ
この記事をご覧になってお分かり頂けたかもしれませんが、特定技能ビザ「建設分野」は通常のビザ申請と比べて審査基準がいくつもあり、非常に手続きが複雑になっております。
行政書士は、その専門知識を活かし、そのような複雑な特定技能ビザ申請をサポートする重要な役割を担っています。当事務所は法令遵守の確認、複雑な書類作成の代行、申請手続きの効率化など、多岐にわたる支援を提供することで、企業の負担を軽減し、スムーズな外国人材の受入れを促進することを目指します。
特定技能ビザに関してお困りのことがございましたら、是非お気軽に当事務所にお問合せ下さい。